3次元データから2次元データへの活用
今回は北海道札幌市の株式会社北農設計センター(以下、北農設計センターと記載)の勝見氏にお話を聞くことができました。
目次
北農設計センターの主な業務
北農設計センターというと農協とのつながりを想像しますが、実際に農協やホクレンというような農業関係の建築物の設計するための事務所という位置づけであるようです。対象は北海道全域の農協やホクレンであり、事務所や工場、倉庫や店舗設計がメイン業務になるということでした。北農設計センターは北海道全域を対象としていますが、農協は全国組織ですので同じような業務をしている会社が他にもあるようです。
CADの役割とSketchUpの活用
勝見氏が実際の業務で利用する建築 CAD の役割をお聞きしたところ、メインはやはり設計図書の作成で、JWCADを中心に3次元で考えて最終的な成果物として2次元で納品となるようです。そこで実際にSketchUpなどの3次元の活用方法が気になり更にお話をお聞きしました。
現在の北農設計センターにおけるSketchUp活用は計画からプレゼン、実施設計までとなっておりますが、SketchUpをここまで活用できているのは現在のところは社内で勝見氏だけだそうです。つまり北農設計センターというより勝見氏がSketchUpを計画からプレゼン、実施設計まで活用されています。
勝見氏以外の担当の方がSketchUpを使っていない訳ではなく、最近導入したArchiCADでは難しい作業を補間するためにSketchUpを使うという手法をとっています。
それ以外にも初期段階のゾーニングにSketchUpを使い、その後はArchiCADに移行するということもあり、前向きにとらえるとSketchUpは初期ではかなり実力を発揮していると理解しました。
北農設計センターに限らず、実際にもいろいろな会社で話を聞くと同じような利用方法は多く、初期段階でのSketchUpの活用はかなり有用だと言えるのではないでしょうか。
BuildMateや3DWarehouseの活用
初期段階のゾーニングでは部品サービス(BuildMateや3Dギャラリーなど)を活用することはもちろん、実際に家具を作成して配備し全体的なボリュームを確認する入り口部分の検討に大いにSketchUpを利用しているようです。
SketchUpで利用可能なデータをダウンロードして配置すれば、イメージを伝えるのに有効なデータが手軽に完成するという流れは世界的にも見られます。
近年、日本で販売されているSketchUp ProにはBuildMateというパーツライブラリが付属しています。これ以外でもインターネット上にたくさんの3次元データがあり、それらを活用して初期段階の空間イメージを作成するのに高度な技術は不要と言えます。
SketchUpと他のCADとの連携
ここ2年程、北農設計センターではArchiCADを導入して実施設計段階の建物を作成し、作成したデータをSketchUpに読み込むことで日影の墨だしなどの確認をすることがあるようです。このような作業にはSketchUpが向いていると言えます。つまり、すべての行程でSketchUpを使わなくてもSketchUpが活躍できる場所で適切に使われていることがわかります。
SketchUpは学ぶのに容易な3次元モデラーです。ご存知のように直感的で癖がなく誰でも簡単に3次元形状を作成できます。先にも記述しましたが他のCADでは難しい作業もSketchUpであれば簡単にできることがあります。適材適所、このような使い方で十分ではないかと考えます。
SketchUpとBIM
ここで話をガラリと変えて、最近よく耳にするBIMに関して北農設計センターの取り組みなどをお聞きしました。勝見氏個人としてはBIMソフトのくくりの中にSketchUpが入ってこないのが悔しいという言葉をおっしゃいましたので、Inventory3Dなどのプラグインの活用もお勧めしたところ、魅力を感じてくれているようでした。
Inventory3Dは作ったデータや情報がモデル内のどこにあって、どのような属性を持っているかなどを仕組みの中で紐づけられる非常に優れたプラグインツールです。
BIMツールであるArchiCADとSketchUpの組み合わせに関して、現状ではSketchUpで作成したデータがArchiCADに渡ると属性がなくなり、単純なオブジェクトになるという問題があります。逆にArchiCADで作成したモデルをSketchUpで表示させるとテクスチャも含めて形状も問題なく入るのでプレゼンテーションはSketchUp側で行うとスマートにできることが多いようです。
BIMツールとしてのSketchUpはまだまだですが、BIM関連のツールとしては十分に力を発揮しています。
今後SketchUpに期待すること
今後、SketchUpをもっと使ってもらえるためのキーワードをお聞きしたところ、意外にもBIMの話しではなくて2次元化の話になりました。
「最終的に納品するのは2次元なので、SketchUpデータの2次元データへの変換連携が強くなるとSketchUpはもっと普及すると思います。」
そんな勝見氏の言葉に私は深くうなずいてしまいました。
日本においては最終的に確認申請も含め、設計図書を作成するので2次元データが必要になります。効率的に2次元図を作成できるのは何よりの強みになるのかもしれません。つまりSketchUp Proに付属しているLayOutの存在が重要になります。
最終的な成果物は2次元CADデータとする必要があるのでSketchUp Proに付属するLayOutにダイレクトでSketchUpデータを入れた上で、SketchUpで作成するのは難しい【とおり芯】などをLayOut上で補って設計図書として利用することができます。
「今後はSketchUpからLayOutへの連携はもちろんですが逆もありかな」と勝見氏は笑顔で話してくれました。私もありだと思います。
勝見氏はTrimble Connectにも興味をお持ちでした。Trimble ConnectはTrimbleが提供しているデータ保管や共有、プロジェクトファイルなどの利用が可能なサービスです。SketchUpデータをTrimble Connectでどう活用できるのか、またTeklaとの連携も今後は視野にいれたいとお話になっていました。更にもっともっとこれら周辺の情報も含めて情報発信をしてほしいとリクエストをいただきましたのでブログや資料で情報を発信をしていきたいと考えています。
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